戦後の日本住宅では、照明に明るさを求めてきました。
蛍光灯の普及がそれに拍車をかけた結果、今でも天井の真ん中に、全体を均質な明かりで照らすことを優先した大きな照明器具(LEDであっても昼白色(蛍光灯の色))をつけた住宅が多いように思います。
昼白色(色温度6700K)の光では演色性が悪く、人の肌が美しくみえません。
この光では生活に潤いを求めることはできないのです。
電気のない時代、日本の住宅には“行燈(あんどん)”という動く照明装置がありました。
暗いところに点在する“行燈のあかり”は、今の住宅より豊かな空間を演出していたかもしれません。
そこで“行燈のあかり”を現在の住宅で考えると、電球色(色温度2800K)の照明器具を選択し、天井の真ん中に配置する考え方をやめ、照明器具を部屋の隅に移動させることで“あかり”を端に移します。
部屋に暗がりをつくるのです。
部屋の暗い部分には、行燈に変わるフロアスタンドを配置します。
2つの照明により“光のたまり”が点在し、奥行きが感じられるようになります。
“行燈のあかり”の演出は、このような方法でも楽しむことができます。
照明器具は、選ぶのではなく“あかり”をコントロールすることを考えるだけで潤いのある豊かな空間を手に入れることができます。
照明は、住まい創りの重要な要素の一つです。